阪本智子の船釣り探見!

阪本智子の船釣り探見!
アマダイ:本州中部以南の、比較的暖かい沿岸の海に生息。アカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイの3種類がいるが、釣り船の対象魚となっているのは主にアカアマダイ。目の後ろに三日月型の銀白斑と尾ビレに走る黄色の線帯で見分けられる。大きなものは60cmくらいまで成長する

第10回 相模湾・茅ヶ崎沖のアマダイ釣り

目次
  • 1:宝石のような姿で食味も抜群!
  • 2:電動タックルに吹き流しタイプの仕掛けをセット
  • 3:海底から1mオモリを上げて誘う
  • 4:船中ファーストヒット!
  • 5:浅場で待望の40cmオーバー

宝石のような姿で食味も抜群!

今回のターゲットはアマダイ。水深30~150mの沿岸域に生息し、岩礁周りの砂や砂泥地のカケアガリなど、起伏のある場所を好む魚だ。海底に穴を掘って身を潜め、エサとなる甲殻類や小魚を待つ習性があり、群れは作らないとされるが、エサが豊富な場所には多くのアマダイ穴があるといわれる。
基本的には一年中釣れるが、産卵期の夏場は喰いが著しく落ちるため、晩秋から春までをシーズンとしている船宿が多い。相模湾はアマダイ釣りが盛んなエリア。12月下旬、老舗船宿の1つである茅ケ崎港の「ちがさき丸」から、アマダイの乗合船に乗り込んだ。アマダイは上品な白身で食味も抜群。「お正月の前にぜひ美味しいお土産を釣りあげたいです!」と阪本さんも気合が入る。
気さくな女将さんやスタッフが切り盛りする「ちがさき丸」

電動タックルに吹き流しタイプの仕掛けをセット

サオは7:3や6:4調子の穂先の感度がよいもので、2m前後の長さのものが使いやすい。オモリ負荷30~50号くらいのもので、軽量でバット部が強いものが向いている。
リールは、やや深い場所を流すこともあるので電動リールがおすすめ。昔のアマダイ釣りは置きザオが主流だったが、現在は1日手持ちでの釣り(=積極的に誘う)が主流となっているので小型電動リールがよい。ラインはPE2~3号を200mも巻いておけばOKだ。
サオはシマノ「ライトゲームBB TYPE73H200」にリールは「フォースマスター400」。ラインはPE2号200m
船の電源も使えるが、シマノ「電力丸」があれば電動リールの性能を最大限発揮させられパワーも安定する。インジケータで使用量もひと目で分かる
仕掛けは枝スを出した2本バリの吹き流しタイプ。これを船宿指定のオモリ70~80号をセットした片テンビンに付ける。ちがさき丸ではオリジナル仕掛けを購入できるが、自作する場合は、テンビンからフロロカーボン3号1mのハリスを出してクレンサルカンに結び、枝スはフロロカーボン3号を30cm、メインハリスは同1m取って、それぞれにピンク系のソフト玉を入れたあと、ヒネリのないタイプのチヌバリ5号あるいはマダイバリ9号を結ぶ。根掛かりなどのトラブルを考えて、仕掛けは4組は用意しておきたい。エサはオキアミを使う。
ポイントに着いたらテンビンに仕掛けをセット。その際、ハリスをしっかりのばしておく
エサ付け
オキアミは尾をハサミで切り……、
ハリ先を刺し入れたら……、
足の部分から抜いて真っ直ぐになるように取り付ける
シングルでもよいが、よりエサがアピールするよう、尻尾を切ったものをもう1匹合わせてダブルにするのも効果的だ

海底から1mオモリを上げて誘う

出船は午前7時。受付をすませた阪本さんに、女将さんが「昨日来ればよかったのにねぇ~。55cm、52cmの大型アマダイが釣れて、普段なら45cmのアマダイで大喜びするお客さんも、これじゃあ小さいねぇ~なんて言ってたくらいだったんですよ」と驚きの釣果情報。とはいえ、大釣りの翌日は逆に苦戦することもあるのが少し気にかかる。
この日の茅ヶ崎沖は、朝から冷たい北風が強く吹いていた。「でも魚はいるんですから、頑張ります!」と阪本さん。釣り場は茅ヶ崎港が目視できる近場なのですぐに釣り開始。水深は83m。船を操る米山翔太さんがスピーカーで「喰いは渋めです。底を絶えずトントン叩いて誘うようにしてください」と呼びかける。
釣り場は茅ヶ崎港のほぼ南でエボシ岩の沖。根回りではマダイ船とポイントが重なる。天気がよければ富士山が相模湾越しに望める
「底からあまり仕掛けを上げないほうがよさそうですね」と阪本さん。
投入は仕掛けの全長が2mと短めなのでハリスからでよい。ハリスが海面に付いて吹き流しの状態になったら、距離を置いてテンビンを入れる。オモリが着底したらリールを巻いてイトフケを取り、仕掛けが立ったところで(=底ダチを取れたところで)、PEラインのマーカーを見てオモリを海底から約1m上げる。この位置が2mの2本バリ仕掛けで釣る時の標準的なタナだ。
タナは潮の流れの速さに応じて変える。潮が速ければタナを海底から50cmに下げ、逆に緩ければ海底から1m50cmまで上げる。
そして大切なのが誘い。アマダイは穴の中にいて上から落ちてくるエサに反応するといわれている。誘いはサオ先が天にくるまでゆっくり大きく持ち上げて、それからゆっくりと下げることを繰り返す。エサが常に上下しているほど、アマダイにアピールできる。さらに誘いと同時に底ダチを頻繁に取り直すことも大切。ただ、ラインが斜めに出ている状態でラインを出して底を取ってしまうと、他の乗船者とのオマツリを招きやすくなるので、なるべくラインが立った状態で行なうことを心掛ける。
誘い方
アマダイの誘いは、タナからゆっくりサオを立てるように持ち上げ、一番上で一瞬ストップさせてから……、
ゆっくりタナまでサオを下ろす動作を繰り返す。その間に底取りをするのも忘れないこと

船中ファーストヒット!

この日、船の中で最初の本命のアタリをとらえたのは、左舷ミヨシにいた阪本さん。ゆっくり誘い上げたサオ先がググンと引き込まれた。「まだ合わせないでいいですよ~」と船長。アマダイはそのままさらに引き込まれるのを待ってから、向こうアワセで巻き上げ始める。
ハリに掛かったアマダイは底近くで強い引きを見せる。まず手巻きで対処し、ある程度魚が浮いた所で電動リールをオンにする。巻き上げのスピードはゆっくり。高スピードにしてしまうと、掛かりぐあいによっては途中でバレやすい。
取り込みは最初にテンビンを回収してからハリスを手繰る。大型の場合は必ずタモ網ですくってもらうこと
巻き上げが終了したら、サオをホルダーに差し、穂先を持ち上げて手前に寄って来たラインを掴む。まずはテンビンを回収し、そのままハリスをたぐって魚を引き取り込む。阪本さんがたぐるハリスの先で海中が銀色に光った。まずお目見えしたのは25cmの本命だ。
海面に浮かび上がるアマダイは宝石のような色合いだ
「小さめですけど、とにかく一尾釣れたのでほっとしました(笑)。まだまだ釣りますよ~」と阪本さん。その後、ポツポツと船中でアマダイが釣れだすが、大ものはなかなか上がらない。それでも阪本さんは2尾目となる35cmも釣りあげてサイズアップ。
「仕掛けが底から浮いてしまうと反応が得られないと思うので、こまめに底を取っています」と言いつつ、ていねいに誘いを入れていく。
ていねいな釣りを続ければ連続ヒットのチャンス!

浅場で待望の40cmオーバー

船長は何度かポイントを変える。水深83mラインを釣ったあとは、64m、43mと徐々に浅くなっていった。43mの浅場は前日に50cmオーバーが連発したというポイントだ。
ここはそれまでの場所に比べて根が多く、こまめに底ダチを取っていた阪本さんも、何度か根掛かりに悩まされた。「すみません、また仕掛けをロスしてしまいました!」と思わず天を仰ぐが、集中力が途切れがちなこんな時こそ、遠くにそびえる富士山を眺めてひといき。気持ちを入れ替え、仕掛けを付け替えて、再度ていねいにねらっていく。
すると、それまでと比べても力強いアタリが来た。慎重に巻き上げると、海面に浮かび上がったのは40cmのアマダイ。さらに潮止まり直前の11時15分、もう一度強烈な引きを見せたのは、この日の最大となる43cmのアマダイだ。40cmオーバーを一気に2尾釣りあげた阪本さんは満面の笑み。
43mの浅場で釣れた43cmのアマダイ
大型アマダイは、底では手巻きで対処し、途中でスロースピードの電動巻き上げを行なうとよい
「朝は風も冷たくてつらかったですが、集中力をとぎらせずに誘い続けられたことが結果につながりました!」
アマダイ釣りは仕掛けも釣り方もとてもシンプル。そしてオニカサゴやイトヨリなどの美味しいゲストが釣れる可能性も高い。冬から春まで限定の旬の味覚を楽しみに、ぜひ大ものも期待して出掛けてみてほしい。
昼頃から海が穏やかになると他の乗船者も順調にヒット
アマダイ釣りの隠れた楽しみが美味しい他魚たち。この日も良型のイトヨリやカサゴ、オニカサゴ、ホウボウなどが船上を賑わせた。本命のほかにもいろいろな魚が釣れる点は、船釣り入門にもうってつけ